なぜ『鬼滅の刃』の最終決戦は、ここまで社会全体を巻き込む巨大なエネルギーを持ち続けているのでしょうか。社会心理学およびコンテンツビジネスの観点から紐解くと、そこには「世代間継承のドラマ」と「共有された体験消費(コ・クリエーション)」の存在があります。
本作のテーマである「想いの継承」――理不尽な暴力に抗い、命を散らしていった者たちの意志を次の者が受け継ぐ構造は、先行きが不透明な現代社会において人々の無意識の共感を呼び起こします。さらに、コロナ禍を乗り越えて「同じ瞬間に同じ劇場で感情を共有する」という劇場体験の尊さが再定義された2020年代半ば以降のエンタメ環境において、三部作という段階的な公開形態は、ファンコミュニティの連帯感を長期にわたって維持・加速させる最強の装置として機能しています。