情報空間でまことしやかに囁かれている裏ワザの中には、紙を回復不能な状態に追い込む危険な誤解が紛れ込んでいます。代表例が「除光液や無水エタノールを綿棒につけて紙を拭けば一瞬で溶ける」という言説です。
これは、修正テープと修正液の違いを混同したことによる致命的な誤りです。修正液は揮発性有機溶剤や水にアクリル樹脂を溶かした「液体塗料」であるのに対し、修正テープはポリエステルフィルム上に薄く形成された「乾式フィルム被膜」です。
除光液に含まれるアセトンやエタノールは、紙の繊維内部に瞬時に浸透し、繊維間の油分を奪ってシミ(油染み)を作ります。さらに、裏面の印刷インクや万年筆インクまで溶解させて裏抜けを引き起こします。溶剤が有効なのは、紙の上ではなく「机、定規、プラスチック製ペンケース、パソコンのキーボードなどに誤って付着した修正テープ」を落とす場面のみです。
硬質プラスチックや塗装されたスチール机に修正テープが擦れて付着した場合は、ティッシュペーパーやコットンに少量の無水エタノール(またはノンアセトン除光液)を染み込ませて軽く拭くだけで、アクリル粘着剤が完全に溶解し、傷をつけることなくサラサラの状態に戻せます。対象の素材が「紙」か「非多孔質面(プラスチック・金属)」かを見極めることが肝要です。