予防接種である以上、薬剤を生体に注入することに伴う生体反応、すなわち犬の混合ワクチンの副作用やアレルギー反応の症状に対する正しい知識と危機管理を欠かすことはできません。ネット上では「副作用が怖いからワクチンは一切打たない」という極端な自然派志向の言説も目立ちますが、感染症に無防備な状態で罹患した際の死亡リスクと天秤にかける必要があります。
ワクチンの副反応は、発症する時間帯によって大きく2つに分かれます。
- 即時型過敏症(アナフィラキシーショック):接種後数分〜30分以内に発生。急激な血圧低下、呼吸困難、チアノーゼ(舌が青紫色になる)、虚脱、痙攣などが現れます。処置が遅れると命に関わるため、直ちにアドレナリン投与などの救急治療が必要です。
- 遅延型過敏症(アレルギー反応):接種後数時間〜半日程度で発生。最も多い症状が、目の周囲や口元がパンパンに腫れ上がる「ムーンフェイス(顔面浮腫)」です。そのほか、全身の蕁麻疹、激しい痒み、嘔吐、下痢、元気がなくぐったりする発熱症状などが挙げられます。
「うちの子は小型犬だから副作用が出やすいのでは?」と不安に思う方も多いでしょう。米国獣医師協会の調査データ等でも、体重の軽い小型犬種や、一度に多数の抗原を接種した場合に副反応の発生率がやや高まる傾向が報告されています。だからこそ、散歩の範囲が狭い小型室内犬に、安易に10種などの高力価ワクチンを選択することは慎重であるべきなのです。
副反応リスクを最小限に抑えるための鉄則は、「午前中の早い時間帯に接種を受けること」です。万が一、帰宅後数時間経ってからアレルギー反応が出た場合でも、午前中に接種していれば午後の診察時間内に速やかに病院へ駆け込むことができます。休診日の前日や夕方以降の接種は絶対に避け、接種後2〜3日は激しい運動やシャンプーを控えて安静に過ごさせることが重要です。