ネット上の情報で頻繁に見受けられる致命的な誤解が、「タグにUSAと書いてあればすべて純粋なアメリカ製である」という認識です。ここに、1990年代のアメリカ貿易政策が生んだ歴史的な盲点が存在します。
1994年、アメリカ、カナダ、メキシコの間で「北米自由貿易協定(NAFTA)」が発効しました。これにより関税が撤廃された結果、フルーツオブザルームをはじめとするアメリカの大手繊維メーカーは、コスト削減のために縫製拠点をメキシコや中米諸国(ホンジュラス、エルサルバドル等)へ雪崩を打つように移転させました。
この過渡期に生まれたのが、次のようなタグ表記です。
- FABRIC MADE IN USA, ASSEMBLED IN MEXICO(生地はアメリカ製、縫製はメキシコ)
- SEWN IN HONDURAS OF USA FABRIC(アメリカ製生地を使用し、ホンジュラスで縫製)
これらは「USA」という文字が入っているため、フリマアプリ等で「90s USA製!」と誤認されて出品されるケースが後を絶ちません。しかし、ヴィンテージとしての厳密な評価基準に照らせば、これらは「純粋なUSA製(アメリカ国内で編み立てから縫製まで完結した製品)」ではなく、ポストNAFTA期の過渡期モデルに分類されます。
真のフルーツオブザルーム USA製 見分け方とは、単にUSAの文字を探すことではなく、「MADE IN U.S.A.」の1行のみがシンプルに刻まれているか、あるいは生産国の注釈が一切入っていない初期モデルであることを確認する作業に他なりません。この歴史的文脈を理解しているか否かが、適正価格で買い物を楽しむための決定的な知識差となります。