東電OL殺人事件において、なぜ警察は真犯人を逃し、無実の外国人を長年にわたり罪に陥れてしまったのか。そこには複数の捜査上の過誤と構造的問題が存在していた。
第一に、「外国人不法滞在者」に対する強い予断捜査があった。事件当時、円山町周辺には多くの不法就労外国人が生活しており、警察は初動段階から彼らをターゲットにした見立て捜査に固執した。公判でゴビンダ氏が「神に誓って私はやっていません」と涙ながらに訴えた声は、捜査機関の描いたシナリオによって完全に封殺された。
第二に、被害者の残した「客ノート」の捜査が途中で打ち切られたことである。ノートには数百人に及ぶ相手の特徴が詳細に記録されていたが、ゴビンダ氏の逮捕に伴い、他の客に関する追跡調査は事実上ストップした。胸元から検出されたDNAを持つ「O型の男性」の身元は、2026年の現在に至るまで特定されていない。
日本の法律では、2010年に殺人罪の公訴時効が撤廃されたが、本事件は時効撤廃前の規定(15年)が適用され、2012年3月をもって刑事責任を追及する時効が完成している。法的に真犯人を起訴することはもはや不可能であり、真相は永遠の未解決事件として歴史の暗渠へと消え去った。