「彦根ラーメンで本当に旨い一杯を食べるならどこに行くべきか」。この問いに対して、地元民と遠方からのラーメンフリークの間では、時に心地よい論争が巻き起こります。結論から言えば、彦根の麺カルチャーは「ソウルフードとしての近江ちゃんぽん」と「滋賀を牽引するトップランナーの自家製麺」、そして「胃袋を直撃する濃厚豚骨・家系」という3つの明確な軸で成立しています。
まず押さえるべきは、1963年に彦根駅前で創業した「麺類をかべ」を起源とする近江ちゃんぽん総本家です。白濁した豚骨スープに太麺を合わせる長崎ちゃんぽんとは根本的に異なり、削り節と昆布から引いた京風の黄金だしにたっぷりの野菜と豚肉を煮込み、かんすい控えめの中華麺を合わせるのがその正体。中盤からレンゲに酢を垂らして楽しむ味変スタイルは、今や彦根市民のDNAに刻まれた不可侵の作法となっています。
一方で、滋賀の現代ラーメンシーンを全国区へと押し上げた立役者が、宇尾町に拠点を置くラーメンにっこうです。「ラーメン、さぼりません。」を愚直に掲げ、看板の「鶏白湯」「柚子つけ麺」をはじめ、滋賀の地醤油を活かした「湖国ブラック」まで、隙のない構成で連日長蛇の列を形成。さらに、名店仕込みの端正な清湯スープと上質な自家製麺で関西中の麺通を唸らせる麺や 江陽軒が追随し、近年では彦根駅前への出店も果たしてアクセスの壁を取り払いました。
これらに加え、銀座街で長年親しまれる老舗「らーめん本気(まじ)」の中華あんかけや、濃厚派を虜にする「近江道家」の家系豚骨、鶏の旨味を極限まで抽出した「らーめんチキン野郎」など、人口11万人規模の地方都市とは思えないほど重層的で豊かな生態系が広がっています。