溶連菌感染症を「喉の風邪」と軽視してはならない最大の理由は、感染後に引き起こされる遅発性合併症の危険性にあります。急性期の症状が治まった後、数日から数週間を経て体内の免疫反応が異常を起こし、二次的な病態を引き起こすことがあります。
代表的な合併症の一つが「急性糸球体腎炎」です。感染から1〜3週間後に血尿(コーラ色の尿)、手足や顔面のむくみ(浮腫)、急激な血圧上昇などの症状で発症します。もう一つの代表例である「リウマチ熱」は、感染から2〜4週間後に発熱や多発性関節炎を引き起こし、重症化すると心臓の弁膜に恒久的な障害を残す心臓弁膜症へと移行します。
さらに近年、公衆衛生上の重大な関心事となっているのが「劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)」です。通称「人食いバクテリア」とも称されるこの病態は、突然の四肢の激痛や腫脹、高熱から始まり、わずか数十時間で壊死性筋膜炎や多臓器不全、ショック状態へと急激に進行します。致死率は約30%と極めて高く、咽頭炎を引き起こす通常の溶連菌とは感染経路や菌の侵入部位が異なる場合もありますが、皮膚の傷口や粘膜バリアの破壊から菌が血液中に侵入することで発症するため、基礎疾患を持つ方や免疫力が低下している中高年は初期症状の急激な悪化に厳重な警戒を払う必要があります。