そもそも葬儀で清めの塩を使う理由は、仏教の教えそのものではなく、日本固有の神道(神仏習合の習俗)に由来しています。
神道において、死は「生命力が衰え、気が枯れ果てた状態(気枯れ=けがれ)」として捉えられます。この穢れは周囲に伝染・波及するものと考えられたため、強い防腐力と浄化力を持つ「塩」を用いて生者の生命力を回復させ、日常の空間を清める儀礼が定着しました。
古代の『古事記』において、伊邪那岐命(イザナギノミコト)が黄泉の国から帰還した際に海水で禊(みそぎ)を行った神話が、現在の塩によるお清めの原型とされています。つまり、故人そのものを清めるのではなく、「死という非日常の衝撃に触れた参列者自身の心身を日常へと切り替えるための心理的・宗教的バウンダリー(境界線)」として機能してきた歴史があります。