周囲から「働かないのは甘えだ」「誰だって仕事は辛いものだ」と心ない言葉を投げかけられ、深く傷ついた経験を持つ人は少なくありません。しかし、心理臨床および脳科学の観点において、働くのが怖いと感じる心理を「甘え」と断じる言説は明確な誤謬です。
人間は過度なストレスや心理的暴力を受けると、脳の扁桃体が過剰に興奮し、「戦うか・逃げるか(闘争・逃走反応)」のスイッチを強制的に作動させます。過去の職場で激しい叱責を受けたり、人格を否定されるようなパワーハラスメントを経験したりした脳は、「職場=生存を脅かす危険地帯」として記憶します。その結果、求人票を見たり面接を想像したりするだけで、身体が反射的に拒絶反応を示す「条件反射的な恐怖」が形成されるのです。
厚生労働省が実施した「労働安全衛生調査」の推移を見ても、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.2%に達しています。働く恐怖を覚える状態とは、精神的な弱さによる逃避ではなく、これ以上傷つかないために心が強制ブレーキをかけている「認知的・生体的な防御機制」に他なりません。