狂騒曲は、東京のオークションハウスから始まったわけではない。ロンドン、シンガポール、そしてニューヨーク。世界の富裕層がこぞって買い求めるのは、フランスの特級ワインだけではなくなった。その主役に躍り出たのが、福井の雪深い山あいで醸される至高の液体だ。生産量は毎年ごくわずか。需要が供給を何十倍も上回る状況下で、価格の暴騰はもはや必然と言える。
オークションでの落札額が跳ね上がるたび、ため息をつくのは長年のファンだ。かつては特別な日に地元の酒屋で手に入ったはずのボトルが、今や手の届かない雲の上の存在になってしまった。投機目的の買い占めも横行し、本質的な「味わう喜び」が置き去りにされているとの批判も根強い。