大宮駅東口から徒歩約2〜3分、すずらん通りを抜けた一角に佇む「食堂 多万里」。ビルが密集する近代的な街並みの中で、色褪せた看板と年季の入ったガラス戸は圧倒的な存在感を放っています。同店が産声を上げたのは、終戦の翌年である1946年(昭和21年)。復興期の闇市的な賑わいの中から始まり、国鉄(現JR)大宮工場の鉄道マンや近隣商人たちの胃袋を支え続けてきた歴史を持ちます。
ガラガラと引き戸を開けると、そこには昭和中期にタイムスリップしたかのような光景が広がります。パイプ椅子と木目調のテーブルが整然と並び、壁には短冊状のメニュー札がズラリ。そして入店してすぐ出迎えてくれるのが、昔ながらの「食券前払い制」です。レジ番の店員に注文を伝え、代金と引き換えにプラスチック製の札や紙の食券を受け取るスタイルは、創業当時からの合理的なシステムを今に伝えています。
店内は4人掛けテーブル席が中心となっており、混雑時の「相席」は暗黙の了解。見知らぬ客同士が互いに配慮しながら肩を並べて麺をすする光景は、現代の飲食店が失いつつある温かいコミュニティの縮図そのものです。