ネット上の掲示板やSNSでは「赤ニキビにVGクリームを塗ったら翌朝赤みが引いた」という書き込みが散見されます。この体験談が、多くの読者に致命的な誤解を与えている原因です。結論から言えば、VGクリームでニキビは根本的に治りません。むしろ、一時的な改善の後に激しいリバウンドと重症化を招く危険性が極めて高い薬です。
VGクリーム(代表的な先発薬名:リンデロンVG)は、以下の2つの有効成分で構成されています。
- ベタメタゾン吉草酸エステル:日本で5段階に分類されるステロイド外用薬のうち、上から3番目に強力な「強力(Strong)群」に属する合成副腎皮質ホルモン。
- ゲンタマイシン硫酸塩:グラム陰性菌やブドウ球菌に対して抗菌作用を発揮するアミノグリコシド系抗生物質。
VGクリームを塗布すると、ベタメタゾン吉草酸エステルの強力な抗炎症作用と血管収縮作用によって、ニキビ周囲の毛細血管が収縮し、数時間から半日程度は赤みが引いたように見えます。しかし、これは炎症反応を無理やりフタをして隠しているに過ぎません。
同時にステロイドは、皮膚局所の免疫細胞(マクロファージや好中球)の働きを強力に抑制してしまいます。その結果、毛穴の中で皮脂をエサに潜む「アクネ菌(Cutibacterium acnes)」や「マラセチア菌」に対する防御壁が崩壊します。さらに、配合されているゲンタマイシン硫酸塩は嫌気性菌であるアクネ菌にはほとんど効果を示さないため、細菌が無防備になった毛穴内で爆発的に増殖し、数日後に以前よりも巨大で膿を持ったニキビへと悪化するのです。