ネット上やSNSでは「取次は中抜きをしているだけの存在」「すべての出版社が書店と直接取引すれば解決する」といった極論が散見されます。しかし、ここには流通の構造的現実を見落とした重大な誤解があります。
誤解1:「取次を排除して直取引にすれば書店も出版社も儲かる」
書店と出版社が直接取引(トランスビュー方式や直販システム)を行えば、確かに書店の粗利は30%前後に跳ね上がり、出版社の取り分も増えます。しかし、これには「個別配送の送料負担」と「請求・代金回収の手間」がすべて各社に跳ね返るという巨大な代償が伴います。
年間数万点におよぶ新刊を、数千社の出版社がそれぞれ個別に書店へ発送し、1店舗ごとに請求書を発行していては、事務コストと送料で書店・出版社双方が倒れかねません。取次が存在することで、数万冊の本が一括で納品され、代金決済が1本化されているという「インフラのスケールメリット」は、完全な直取引では代替できないのが現実です。
誤解2:「電子書籍が100%になれば取次は完全に消滅する」
電子書籍市場はコミックを中心に急成長していますが、児童書、学習参考書、写真集、豪華本、文庫本などの紙媒体は依然として根強い需要を保っています。取次各社はすでに紙の本だけでなく、電子書籍の取次事業(メディアドゥ等の協業・連携)や、書店の店頭をメディア化するデジタルサイネージ広告、雑貨・知育玩具の流通など、「書店の総合空間プロデュース業」への転換を急いでいます。