1980年3月、劇場の大スクリーンに初めて現れた『ドラえもん のび太の恐竜』は、当時の子供たちに強烈な衝撃を与えた。テレビアニメの日常的なドタバタ劇から一転、日常のすぐ裏側に広がる壮大な太古の世界へ飛び出すプロット。日常と非日常の落差こそが、劇場版ドラえもんの最大の醍醐味である。
藤子・F・不二雄(藤本弘)氏が生み出した大長編シリーズの骨格は、きわめてシビアな現実と希望の対比の上に成り立っている。道具に頼るだけでは解決できない極限状態に追い込まれたとき、のび太やスネ夫、ジャイアンが見せる「人間の強さと弱さ」。タケコプターがバッテリー切れを起こし、未知の脅威に素手で立ち向かわざるを得ない絶望感。それらを乗り越える友情のドラマが、観客の感情を揺さぶり続けてきたのだ。