公開当時(2001年)の劇場や初期の地上波放送において、カシラは「子供がガチで泣く怖いキャラクター」の筆頭でした。SNSやファンコミュニティの声を調査すると、「幼少期、夜の廊下を歩くのが怖くなった」「あの髭面がゴロゴロ近づいてくるシーンがトラウマ」といったリアルな実体験が多く寄せられています。首だけで生きているという生理的嫌悪感と、感情が読めないぎょろりとした瞳が、恐怖心を刺激したことは間違いありません。
しかし、時代が進むにつれてその受容のされ方は劇的な変遷を遂げています。作中で千尋がハクの血を拭うために湯婆婆の部屋へ飛び込んできた際、千尋に寄り添うように首を傾げたり、銭婆の魔法で坊に変身させられた後は3段重ねになって必死にお菓子をねだったりと、仕草の端々に「独特のユーモアと哀愁」が漂っていることに観客が気付き始めたためです。
ジブリ公式ショップ「どんぐり共和国」などでは、カシラをモチーフにしたぬいぐるみや指人形、だるま型の起き上がりこぼし、靴下などのグッズが定期的にリリースされ、発売直後に品薄となる現象が起きています。さらに、国内外で大絶賛を浴びた舞台版『千と千尋の神隠し』では、世界最高峰のパペット演出家ジョン・ケアードの手により、精巧なパペットとして再現。黒衣の操演者が息を合わせて転がし跳ねさせる圧巻のパフォーマンスに対し、海外の観客からも「不気味なのに信じられないほどキュートだ」と割れんばかりの拍手が送られました。