劇中で見せるチェロの演奏シーンは、すずめちゃんの感情の揺らぎをそのまま音楽にしたような迫力を帯びています。カルテットでの満島ひかりのチェロ演奏は、撮影前の徹底的な猛特訓を経て吹き替えなしで撮影されたパートも多く、楽器を構える指先や弓の運び、背中のしなりに至るまでプロの演奏家そのものでした。
さらに特筆すべきは、カルテットにおける坂元裕二の脚本との親和性です。坂元裕二が満島ひかりを想定して当て書きしたとされるすずめのセリフは、軽快なユーモアと張り裂けそうな切なさが同居しています。早口でまくし立てるコミカルな掛け合いから、沈黙のなかに滲む繊細な感情表現まで、満島ひかりの圧倒的な演技力の評価は本作でさらに揺るぎないものとなりました。