田辺文学の躍進を語る上で欠かせないのが、大手出版社・講談社との深遠な関わりである。同社から刊行された数々の作品や自伝的エッセイは、当時の女性たちを中心に絶大な支持を獲得。出版業界における女性向けエッセイのポジションを確固たるものにした。
単なる日常の愚痴やのろけ話にとどまらない。人間の弱さや滑稽さを肯定し、クスッと笑わせながらも最後には温かい涙を誘う筆致。講談社から世に送り出されたこれらの書籍は、高度経済成長期の忙しない社会に生きる人々の「心の清涼剤」として機能した。昭和から平成へと時代が変わっても色褪せない言葉の強さが、そこには宿っている。