現場取材班が平日夕方のJR渋谷駅ハチ公改札付近で観察を行ったところ、改札を出た利用者の約3割が案内板の前で足を止め、スマートフォンの地図アプリを開き直す姿が見受けられました。宮益坂方面へ向かいたい人々がここまで高確率で立ち往生する背景には、渋谷駅特有の「名称と空間配置の非対称性」があります。
最大の要因は、切符売り場や改札の名称として「JR渋谷駅宮益坂口改札」という独立したゲートが存在しない点にあります。宮益坂方面へ出るためのメインゲートは、スクランブル交差点側の代名詞である「ハチ公改札」そのものです。JR東日本の構内図上、1階コンコースの改札機を出て「左」へ進めば忠犬ハチ公像とスクランブル交差点が広がるハチ公口、「右」へ進めば明治通りと宮益坂交差点へ抜ける宮益坂口という表裏一体の構造になっています。
さらに、長期にわたる渋谷駅再開発工事の現在進行形の区画整理により、仮囲いや仮設壁が視界を遮り、かつて存在した東口バスターミナル周辺のランドマークが一変しました。改札を出た瞬間に視界が開ける西側(ハチ公口)に人の流れが無意識に吸い寄せられ、右手の宮益坂方面通路を見落としてしまうトラップが随所に仕掛けられているのです。