長年親しまれた日本武道館を離れ、両国国技館をメイン会場に据える体制が続いていますが、視聴者の間では「なぜ改修が終わった日本武道館へ戻さないのか」という疑問が今なお根強く囁かれています。結論から言えば、テレビ中継の現場運用と安全管理の観点において、日本テレビ制作局が両国国技館を選択する理由は極めて合理的かつ現実的な判断に基づいています。
日本武道館は2020年東京五輪・パラリンピックに向けた改修工事を2020年に終えており、物理的な使用自体はすでに可能です。それでもなお制作幹部や技術スタッフが両国国技館を推し続ける最大の要因は、「アリーナ中央から全周囲を見渡せるすり鉢状の固定客席構造」と「大型中継車・電源車の収容キャパシティ」にあります。日本武道館は八角形の構造上、アリーナ後方にデッドスペースが生じやすく、巨大な美術セットを組んだ際のカメラアングルに制限がかかります。これに対して両国国技館は、相撲興行のために設計された吊り屋根構造と柱のない開放空間が特徴で、アリーナフロアをフル活用したステージレイアウトが容易です。
さらに、放送業界関係者の証言によると、日本テレビが長年蓄積してきた「両国国技館専用の生放送オペレーションマニュアル」が完成の域に達している点も見逃せません。中継ケーブルの引き回し、出演者の控室確保、サブステージの展開など、24時間の生放送を無事故で完走するためのノウハウが国技館に最適化されているため、莫大なコストとリスクを冒してまで武道館へ戻す積極的な理由が見出しにくくなっています。2026年の放送日程も例年通り8月最終週(8月29日土曜日から30日日曜日にかけての枠)が軸となっており、制作体制はすでに両国国技館での生放送を前提に進行しています。