コハダの仕込みは、丁寧かつ迅速な下処理から始まります。まずはウロコを丁寧に取り除き、頭を落として内臓を傷つけずに洗い流すコハダ下処理方法が基本です。身の大きさに応じて「腹開き」または「背開き」にし、中骨や腹骨を綺麗にすき取った後、氷水で素早く洗って水気を完璧に拭き取ります。
ここからが職人の腕の見せ所となる「締め」の工程です。塩を振って余分な水分と生臭さを抜き、旨みを凝縮させる時間を割り出します。一般的にコハダ酢締め黄金比と呼ばれる基準は存在しますが、実際の名店では固定された配合比率やタイマーに頼ることはありません。
脂が乗った冬場の肉厚な個体であれば、強めの塩で20分〜30分程度脱水させた後、酢に5分〜10分程度潜らせます。逆に脂の少ない初夏の新物であれば、ごく薄い塩で数分、酢通しは数秒で引き上げるなど、気温や湿度までも考慮した微調整を施します。酢から上げた後、半日から数日寝かせることで、酸味と塩気が身全体へ均一に馴染み、まろやかな旨みへと昇華するのです。これら一連の江戸前寿司仕込みの精緻さこそが、格別な味わいを生み出します。