通夜や葬儀、年忌法要において、参列者が最も迷いやすいのが具体的な立ち振る舞いです。他宗派の常識を持ち込むと、大谷派の教理上、重大なマナー違反となるケースがあります。
焼香と数珠の正しい扱い方
真宗大谷派の焼香は、「2回、額に押しいただかずに香炉へくべる」のが鉄則です。香をつまんだ手を目の高さまで持ち上げる所作(押しいただく行為)は行いません。香そのものを尊ぶのではなく、香を焚くことで心身を清め、仏前を荘厳にするための行為だからです。
数珠(念珠)の持ち方にも決まりがあります。合掌の際は、主玉を両手で挟み、房を左手側に垂らして親指で軽く押さえます。念珠は功徳を積むための計算具ではなく、阿弥陀仏への帰依と感謝を表す法具であるため、音を鳴らして擦り合わせるような仕草は厳に慎みます。
金仏壇の配置と「位牌を用いない」理由
大谷派の仏壇の飾り方は、本尊である阿弥陀如来(絵像または木像)を中心に配置します。向かって右側に「帰命尽十方無碍光如来(十字名号)」や親鸞聖人の御影、左側に「南無不可思議光如来(九字名号)」や蓮如上人の御影を安置するのが正式です。
ここで多くの人が驚くのが、「大谷派では原則として位牌を作らず、仏壇に置かない」という点です。浄土真宗では、故人は亡くなると同時に阿弥陀仏の誓願によって極楽浄土へ往生し仏になる(即得往生)と説きます。霊魂がこの世をさまよったり、位牌に宿ったりするという観念が存在しないため、位牌の代わりに「過去帳」や「法名軸」に法名を記して荘厳します。
葬儀の流れと儀礼の独自性
真宗大谷派の葬儀には、他宗派に見られる「授戒(戒律を授ける儀式)」や「引導(死者を迷わず彼岸へ送る宣告)」が一切ありません。故人は自らの修行や善行によって成仏するのではなく、阿弥陀仏の無条件の慈悲(他力)によってすでに救われているためです。
葬儀式は「故人を供養するため」ではなく、遺された者が故人を縁として「命の無常と仏の慈悲を確かめ、感謝する場(報恩感謝)」として執り行われます。