これまで福岡の強みとされてきた「適度な都市機能と低い生活コスト」というバランスが、根底から揺らいでいる。東京や大阪などの首都圏でも最低賃金の引き上げが加速しており、リモートワークの普及や全国展開する大手企業の賃金水準統一によって、若年層の労働力が他地域へ流出する懸念は消えていない。
地元経済団体の幹部は明かす。「最低賃金の額面だけを見れば首都圏との差は縮まっているように見えます。しかし、物価上昇率や社会保険料の負担感を加味すれば、労働者の実質的な『豊かさ』が向上したとは到底言えません」。引き上げ競争のスピードに、地方の購入力が追いついていない現状が浮かび上がる。
賃金の「引き上げ額」に目を奪われがちだが、実質賃金が伴わなければ意味がない。労働者にとっては生活が楽にならず、事業者にとっても負担だけが増すという悪循環が、地方都市をじわじわと締め付けている。