瞳の色は、絵の具を混ぜ合わせるように単純な仕組みで決まるわけではありません。決定要因の根底にあるのは、目の色を決めるメラニン色素の量と質、そして物理学上の光学現象です。
虹彩は大きく分けて「前面の間質(ストローマ)」と「後面の網膜色素上皮層」で構成されています。後面上皮には人種を問わずほぼ全員が多量の黒褐色メラニンを持っていますが、前面の間質に含まれるメラニンの沈着量によって、外から見える色が劇的に変わります。
- メラニンが多い場合(ブラウン):光がそのまま吸収され、黒〜茶色の色素がそのまま反射する。
- メラニンが極めて少ない場合(ブルー):間質内の微粒子によって波長の短い光(青)だけが反射・拡散される「レイリー散乱」が起き、空が青く見えるのと同じ原理で青く輝く。
- メラニンが中程度の場合(グリーン・ヘーゼル):青色の散乱光に微量〜適量の黄色系メラニン(フェオメラニン)が重なり、緑や黄褐色として認識される。
過去には「茶色は優性、青色は劣性」というメンデルの法則に基づいた単純なモデルで説明されていましたが、現代の分子遺伝学では16種類以上の多因子遺伝(ポリジーン遺伝)であることが判明しています。
特に第15染色体に位置する「OCA2」(メラニン合成に関わるPタンパク質を制御)と、その発現スイッチを握る「HERC2」遺伝子の相互作用が約7〜8割の決定力を持ちます。これに加えてSLC24A4やTYRといった補助的遺伝子が微調整を行うため、両親と子供の目の色遺伝確率においては、「両親がブラウンアイであっても、隠れたブルー遺伝子を受け継ぎ青い目の子供が生まれる確率(約6〜18%)」が理論的にも現実的にも十分に起こり得ます。