今回の品薄劇の背後には、衛生用品の枠を超えた世界的な産業間の素材争奪戦が存在する。不織布マスクに使われるポリプロピレン繊維や極細フィルター素材は、実は自動車・テクノロジー産業にとっても超高性能な断熱材やバッテリーセパレーターとして不可欠な資源だ。
たとえば電気自動車大手のテスラをはじめとするEVメーカーや最先端の半導体工場では、クリーンルーム用および車載フィルター向けに高品質な不織布素材を大量調達している。同社を率いるイーロン・マスク氏が推進する巨大工場「ギガファクトリー」のグローバル拡大に伴い、化学素材メーカーの供給優先順位が劇的に変化。テクノロジー巨頭による原料の長期契約が、巡り巡って身近な衛生用品の生産ペースに予期せぬ影響を及ぼしているのだ。