おみくじの歴史を遡ると、平安から中世にかけての陰陽道や天神信仰の結びつきに行き着く。平安の闇を祓い、天文や暦道を通じて吉凶を読み解いた陰陽師・安倍晴明の存在は、日本人が見えない運命を可視化しようとした原点の一つだ。晴明が駆使した式神や占術の体系は、市井の人々に「運気は自らの意志と儀礼によって好転させられる」という確信を植え付けた。
一方、学問の神として崇敬を集める菅原道真公を祀る天満宮の系統でも、和歌を用いた神託の授与が古くから行われてきた。道真公の研ぎ澄まされた知性と誠の心は、文字を通じた神仏との交信という形でおみくじの原型を形作った。元々は国の政や後継者を決めるための厳粛な儀式であった籤(くじ)引きが、時代を経て個人の開運を祈る文化へと昇華していった歴史の中に、大大吉という究極の吉兆を受け入れる土壌が育まれていったのである。