中野英雄の演技力に対する評判は、本作を契機に映画評論家や一般ファンの間で跳ね上がりました。元々『愛という名のもとに』(1992年)の「チョロ」役で社会現象を巻き起こし、その後は数多くのVシネマで任侠映画の現場をこなしてきた叩き上げのバックボーンがあります。
北野組において中野が見せたのは、単なる大声の怒号ではなく、「腹の底に溜まった泥水のような憎悪」と「男が腹を括った瞬間の静けさ」のコントラストでした。特に『ビヨンド』でかつての宿敵・大友と刑務所出所後に対峙するシーンでは、一切の無駄な身振りを排した眼光だけで観客を圧倒しました。
アウトレイジにおける木村の名セリフとして語り継がれるのが、大友組の残党や敵対勢力に対して放った「てめぇ、俺の顔見て何も感じねぇのかコノヤロー!」という怒号や、大友と盃を交わす際の「大友さん、アンタと俺の仲じゃねぇか」という、仁義を超えた漢の連帯を示す言葉です。過剰な装飾を削ぎ落とした台詞回しが、映画全体のリアリティを一段上の次元へと押し上げました。