上方落語界の巨星・桂ざこばの破天荒な落語家人生と愛された人情味あふれる素顔に迫ると、そこには数々の心温まる名演の裏話が隠されている。かつて「桂朝丸」の名義で高座に上がっていた若手時代、師匠の厳しい指導を受けながらも、自分の色を模索し続けた。彼の高座はいつでも「生身の人間」が立ち現れる場所だった。
知られざる独占秘話として今も関係者の間で語り継がれるのが、楽屋での弟子や後輩に対する並々ならぬ思いやりだ。舞台上での激しい言動とは裏腹に、楽屋へ一歩入ると「お腹すいてへんか」「なんか困ったことはないか」と細やかに気配りを見せていた。高座で見せる涙は計算された演出ではなく、高座の登場人物や共演者の人生に心の底から共鳴してしまうからにほかならない。この人間臭い優しさこそが、多くのファンや関係者を惹きつけて止まなかった理由だ。