「うちに来る若い子はね、最初はみんな硬い顔をしてるのよ」
御年70歳を迎えるママは、手際よくチャームの乾き物を皿に盛り付けながら目を細めた。長年この場所で人の喜怒哀楽を見つめ続けてきた彼女の接客には、マニュアルなど存在しない。客が話したくなさそうな時は黙って酒を出し、少し口を開いたら相槌を打つ。ただそれだけだ。
過剰なホスピタリティや、マニュアル通りの笑顔はここでは不要。この「引き算の接客」こそが、四六時中評価に晒される現代人の緊張を解きほぐす。他人に干渉されすぎず、かといって放置もされない。絶妙な距離感が、そこにはある。