顔の黄金比率を語るうえで避けて通れない「中顔面」とは、一般的に「眉下(または下まぶたのライン)から鼻下、あるいは上唇の中央まで」のエリアを指します。日本人成人女性における下まぶたから上唇中央までの垂直距離は、平均して約6.0〜6.5cmの範囲に収まります。この数値が6.8cm以上になると、客観的にも縦の長さが強調されやすい傾向にあります。
しかし、実際の計測値以上に重要なのは、顔全体の縦横比率です。「額の生え際〜眉頭」「眉頭〜鼻下」「鼻下〜顎先」が1:1:0.8のバランスに収まっている場合、たとえ中顔面が多少長くても美しい立体感として認識されます。中顔面が視覚的に間延びして見える背景には、主に3つの解剖学的・生理的要因が存在します。
第一に上顎骨(じょうがくこつ)の垂直方向の発達という先天的骨格です。幼少期の口呼吸やアレルギー性鼻炎に伴う「アデノイド顔貌」傾向、あるいは遺伝によって上顎骨が下方へ長く形成された場合、物理的に目と口の距離が離れます。
第二に加齢に伴う顔面深部腱膜(SMAS)の弛緩と骨吸収です。30代以降、眼窩(目のくぼみ)や上顎骨の骨量が減少すると、頬の脂肪メーラーファットが雪崩のように下垂します。その結果、目の下の余白が下方へと広がり、若い頃には気にならなかった中顔面の伸びが顕在化します。
第三に表情筋(大頬骨筋・上唇鼻翼挙筋など)の機能低下です。スマートフォンの長時間凝視や無表情の常態化により、口角を引き上げる筋力が衰えると、人中(鼻下から上唇の距離)が伸びて鼻柱が下垂し、顔の下半分へと視線が引きずり下ろされます。