現地を実際に訪れた旅行者や地元住民の生の声からは、息を呑む絶景への賛嘆と同時に、観光マナーを巡る切実な現場の葛藤が浮かび上がってきます。
毎秋、現地に通い詰めているという道内在住のベテラン風景写真家は、その魅力を次のように熱く語ります。
「肉眼でただ漫然と見渡すと、道東によくある少し長い農道のように思えるかもしれません。しかし、夕暮れ時の16時40分、望遠ファインダーを覗き込んだ瞬間に世界が一変します。遥か数十キロ先の道路中央に真っ赤な夕日がピタリと重なり、アスファルトがオレンジ色の光の帯となって天に伸びていく。あの瞬間、周囲にいる数十人の観光客が一斉に息を呑み、静寂の中でシャッター音だけが響き渡る空気感は他では絶対に味わえません」
一方で、SNSのリアルタイム投稿や地元コミュニティの声に耳を傾けると、見過ごせない問題も浮き彫りになります。
「映える写真を撮りたいあまり、三脚を立てて車道の中央に飛び出す観光客が後を絶たない」
「ここは斜里町の基幹産業である農業地帯。巨大なトラクターやビート(甜菜)を運ぶ大型トラックが頻繁に往来するのに、路上駐車で道を塞がれて農作業に支障が出ている」
知床の自然と調和した静けさを守るためにも、歩道や指定された見学エリアの枠を出ず、生活道路を利用する地元車両を最優先にする意識が一人ひとりの旅人に強く求められています。