危険を招くNGサインがある一方で、知識として持っておくことで自分や他人の命を救えるのが救難信号のハンドサインです。とりわけSOSハンドサインのやり方と広まった経緯は、防犯意識の高まりとともに世界中で共有されるべき必須の教養となっています。
音を立てずに助けを求める「Signal for Help」の正しい手順
国際的に「Signal for Help(助けを求める合図)」と呼ばれるこのSOSハンドサインは、加害者がすぐ隣にいる状況や、監視されていて声を出せない場面で、第三者に「私は今、暴力や監禁などの危険に晒されています。警察に通報してください」と伝えるための動作です。具体的な手順は以下の3ステップで構成されています。
- ステップ1:相手(助けを求めたい人・カメラなど)に向かって、片手の手のひらをまっすぐ見せる。
- ステップ2:親指を手のひらの内側に向かって折り曲げる。
- ステップ3:残りの4本の指を上から折り曲げ、親指を包み込むようにして「握りこぶし」を作る(この動作を静かに繰り返す)。
親指を4本の指で閉じ込めるこの動きは、「自分自身が閉じ込められている(監禁・支配されている)」状態を視覚的に象徴しており、片手だけで、かつ背後にいる加害者に気づかれにくい自然な動きで実行できるよう緻密に設計されています。
パンデミック下のDV急増から誕生し、実際の誘拐事件で少女を救った実績
このサインは2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)によって世界中で家庭内暴力(DV)が急増した際、被害者がビデオ通話などを通じて外部に無言でSOSを発信できるよう、カナダ女性財団(Canadian Women's Foundation)が考案しました。
その有効性が世界に衝撃をもって証明されたのが、2021年11月にアメリカ・ケンタッキー州で発生した16歳少女の誘拐事件です。ノースカロライナ州から61歳の男に誘拐され、車内に監禁されて州間高速道路を移動していた少女は、並走する後続車のドライバーに向かって車窓からこのSOSハンドサインを送り続けました。奇跡的にTikTokでこのサインの意味を知っていた後続車のドライバーがただちに911(緊急通報)へ連絡し、車の位置情報を追跡した警察が男を逮捕、少女は無事に救出されました。
報道各社の取材データや警察当局の発表によると、この事件以降、欧米だけでなく日本国内でも警察庁や各都道府県の防犯協会、教育機関による周知が加速しました。実際に日本でも2024年から2026年にかけて、交際相手からのDV・監禁被害に遭っていた女性がコンビニエンスストアの店員や宅配業者に対してこのハンドサインを示し、店員の機転による110番通報で保護に至った事案が複数報告されています。