玉縁ポケットを縫う際、最も多くの人が直面するトラブルが「四隅の角が引きつれてシワが寄る」、あるいは「角が引っ張られて穴が開きそうになる」という現象です。この成否を分けるメカニズムは、主に3つの工程に集約されます。
第1の要因は、「Y字の切り込み(ノッチ)」の深さ不足です。玉縁ポケットは、身頃を長方形に縫い合わせた後、中央から角に向かって斜め45度にハサミを入れて裏側へ布をひっくり返します。このとき、縫い糸を切る恐怖心から角の1.5〜2mm手前でハサミを止めてしまうケースが後を絶ちません。角の頂点に対して切り込みが浅いと、布を裏返した際に縫い代が引きつり、表側に突っ張ったような放射状のシワが発生します。プロの現場では、刃先の鋭利な糸切りバサミや小バサミを用い、縫い糸を1本も切らずに「残り織り糸1本(約0.5〜1mm)」の限界まで正確に切り込むことが鉄則とされています。
第2の要因は、接着芯の選定ミスと貼り位置のズレです。身頃のポケット口に貼る伸び止めテープは、切り込み時の布端のほつれを防ぎ、角の強度を保つ生命線です。粗悪な芯地を使ったり、ポケット口の出来上がり線より外側に芯が届いていなかったりすると、切り込みを入れた瞬間に布の織り糸が解け、角に穴が開く「パンク」を引き起こします。
第3の要因は、口布(玉縁布)の平行度とアイロンワークの甘さです。上下のステッチ幅が1mmでも狂うと、長方形が台形に歪み、表に返したときに均一なテンションがかからなくなります。ミシンをかける前にアイロンで正確に折り目を固定し、角の三角布(切り込みで生じた三角の縫い代)を垂直かつ水平に押さえて縫い止める精密さが求められます。