お弁当や作り置きのおかずで、鶏ひき肉がパサパサに固まってしまい、がっかりした経験を持つ人は少なくありません。豚や牛のひき肉に比べて脂質が少ない鶏ひき肉、特にむね肉を使ったミンチは、加熱によってタンパク質が急激に収縮し、内部の水分を外へ押し出してしまう性質を持っています。それにもかかわらず、絶賛される人気レシピにおいて冷めても柔らかい決定的な理由は、肉の保水力を科学的に高める「プレ処理」と「なすのスポンジ構造」の相乗効果に隠されています。
現場取材で見えてきた鶏むねひき肉パサつかないプロの技と真相は、火にかける前のひと手間にあります。ひき肉に対して酒(重量の5%)と片栗粉(重量の3%)をもみ込み、加熱時のタンパク質の網目構造をデンプンで保護する手法です。これにより肉汁の流出を防ぎ、繊維の間に水分を閉じ込めます。さらに、加熱と同時になすから放出される蒸気と適度な水分が肉を包み込み、まるで天然のスチーマーのような役割を果たすため、時間が経過してもふっくらとした食感が損なわれません。