診断が確定した際、提示される治療選択肢の中心となるのが抗インフルエンザウイルス薬である。なかでも代表格である「タミフル(一般名:オセルタミビル)」と、革新的な1回完結型内服薬として普及した「ゾフルーザ(一般名:バロキサビル マルボキシル)」の使い分けには注目が集まる。
抗インフルエンザ薬タミフルゾフルーザ効果の違いを比較する上で重要なのは、作用メカニズムの相違だ。タミフルは細胞内で増殖したウイルスが細胞外へ遊離するのを防ぐ「ノイラミニダーゼ阻害剤」であり、1日2回、5日間にわたって計10回飲み続ける必要がある。20年以上の臨床実績があり、小児や高齢者、重症化リスク患者に対する安全性データが最も強固に蓄積されている。
一方のゾフルーザは、ウイルスの増殖そのものを根本から止める「キャップ依存型エンドヌクレアーゼ阻害剤」である。最大の特徴は、受診時に「1回内服するだけで治療が完結する」という圧倒的な利便性にある。内服後24時間以内に体内のウイルス排出量が劇的に減少するため、周囲への二次感染防止の観点からも高い評価を得ている。ただし、若年層を中心に薬剤耐性ウイルスの出現が一部で報告されており、医師は患者の年齢、基礎疾患、家族構成を総合的に判断して処方を決定している。どちらの薬剤であっても、ウイルスの増殖ピークを叩くために発症から48時間以内の投与開始が厳格な条件となる。
予防の要となるインフルエンザワクチン予防接種の評判についても、過度な期待と不当な失望の双方が入り混じっている。現在日本で流通しているワクチンは、A型2株(H1N1、H3N2)とB型2株(山形系統、ビクトリア系統)を網羅した「4価ワクチン」だ。接種したからといって感染を100%防げるわけではない。国立感染症研究所などの大規模疫学調査によれば、ワクチンの発症予防効果はおよそ40〜60%である。
ワクチンの真価は「発症予防」以上に「重症化阻止」にある。65歳以上の高齢者や基礎疾患(糖尿病、心疾患、喘息など)を持つハイリスク群において、入院リスクや死亡リスクを約70〜80%低減させることが実証されている。「打ったのにかかったから無駄だった」と断じるのは短絡的であり、ワクチン接種による下支えがあったからこそ、38度台の熱で踏みとどまり肺炎や脳症への移行を回避できたと評価するのが感染症学の定説である。
なお、インフルエンザ治るまでの期間詳細まとめとして留意すべきは、抗ウイルス薬を飲めば即座に全快するわけではない点だ。薬の力で熱が平熱に戻るまでの期間は平均1〜2日短縮されるが、傷害された気道上皮粘膜の修復には物理的な時間がかかる。全身の倦怠感、乾いた咳、食欲不振などは発症から7〜10日程度続くのが一般的な臨床経過である。