派手さや過激さを競うストリート仮装へのカウンターカルチャーとして、2019年に完全な市民権を獲得したのが、WEBメディア『デイリーポータルZ』発祥の「地味ハロウィン」です。六本木やカルチャーカルチャーで開催されたイベントには数千人が詰めかけ、地味ハロウィン2019話題としてTwitter(現X)の日本トレンド1位を独占しました。
「ホテルビュッフェで元を取ろうとして結局デザートコーナーで後悔している人」「家電量販店で店員と間違えられる人」「フードデリバリーを部屋着のままドアの隙間から受け取る人」など、日常のわずかな違和感や哀愁を切り取った知的ユーモアは、過剰な露出や騒乱に疲弊していたネットユーザーから熱烈に支持されました。大掛かりな衣装を必要とせず、観察眼と文脈の巧みさだけで勝負するこのフォーマットは、日本の若者文化における「共感の美学」の到達点でした。
一方、テーマパーク文化の雄である東京ディズニーリゾートでは、2019年9月9日から10月31日まで開催された『ディズニー・ハロウィーン』において、全日程での大人フル仮装が定着していました。しかし、ここでも徹底されたのがディズニー仮装2019ルールです。過度な露出の禁止、床に引きずるような長い丈の衣装の制限、本物と見紛う銃器や棒状の危険物の持ち込み禁止、さらには指定エリア外での着替え行為の厳罰化など、秩序維持のための厳密なガイドラインが運用されていました。ルールを守るからこそ成立する「夢と魔法の空間」の安心感は、混沌とする渋谷とは鮮烈なコントラストを描き出していたのです。