須藤京一の代名詞といえば、漆黒のボディに身を包んだ三菱・ランサーエボリューションIII GSR(CE9A)です。1995年に登場したこの第1世代エボの完成形は、WRC(世界ラリー選手権)を制覇するために生まれた戦闘機械であり、京一はこのマシンを徹底的にサーキット・ワインディング仕様へと煮詰めていました。
最大の特徴は、作中で強烈な炸裂音とともに描かれた「ミスファイアリングシステム(2次エア供給システム / アンチラグシステム)」の搭載です。ターボチャージャー特有のアクセルオフ時のターボラグを強制的に解消するため、未燃焼ガスをエキゾーストマニホールド内で再燃焼させ、常にタービンを高回転に保つこのラリー用ハイテク機構により、コーナー立ち上がりの瞬間から最大トルク350馬力オーバーのパワーを四輪すべてに叩きつけることを可能にしました。
当時の走り屋界隈における「FRこそが至高」というノスタルジックな価値観に対し、京一のエボIIIは「圧倒的なテクノロジーと駆動配分がタイムを叩き出す」という冷徹な近代レーシングの思想を突きつけました。マシンの完成度という観点において、当時のストリートでは頭一つ抜けた存在だったと言えます。