原宿店がその長い歴史に幕を下ろしたのは2022年10月30日のことでした。地下から地上階までビル一棟がまるごとサッカー関連ギアで埋め尽くされていたフラッグシップショップの閉店告知は、現役プレーヤーのみならずJリーグや海外サッカーを愛するファン層に大きな衝撃を与えました。
公式発表資料および業界関係者の証言を総合すると、撤退に至った最大の引き金は「定期建物賃貸借契約の満了」に伴う契約更新タイミングと、リテール事業の抜本的な構造見直しが重なった点にあります。原宿駅前の一等地という極めて賃料水準の高い立地において、数フロアにわたる巨大な売り場を維持し続ける固定費負担は、感染症拡大期を経た実店舗ビジネスにとって極めて重い足かせとなっていました。
さらに見逃せないのが、ナイキ(Nike)やアディダス(adidas)、プーマ(Puma)といった主要スポーツブランドが急速に推し進めたD2C(消費者への直接販売)シフトです。かつてはKAMOのような有力専門店へ最優先で配分されていた希少ストックやトップレンジモデルが、メーカー公式アプリや自社直営店へ優先供給される流れが加速しました。こうした市場構造の変化の中で、加茂商事は「原宿という超高コスト立地でのメガストア維持」から「ECプラットフォームと主要ターミナル旗艦店への経営資源集中」へと舵を切る決断を下したのが真相です。