インターネット上の掲示板やSNSでは、タクシーの乗車ルールに関して誤った言説が散見される。現場でトラブルを招かないために、法的な事実と社会通念上のマナーを整理しておく必要がある。
第一の誤解は、「手を挙げたのに止まらなかったのは違法な乗車拒否である」という主張だ。道路運送法第13条において、タクシー事業者は正当な理由がない限り運送の引き受けを拒絶してはならないと定められている。しかし、「交差点の直近など駐停車禁止場所で手を挙げた」「泥酔して介助なしでは歩行できない」「明らかに車内を汚損するおそれがある危険物や泥だらけの衣服を着用している」といった正当な事由がある場合、乗務員には乗車を断る法的な権利が認められている。ドライバーが停車しなかった理由の多くは、意図的な無視ではなく、道交法遵守のためのやむを得ない回避行動である。
第二の盲点が、ビジネスマナーにおけるタクシーマナーと席順の序列だ。複数名で乗車する際、席の配置には明確なルールが存在する。
・最上座(第1席):運転席の真後ろ(最も安全性が高く、視界が安定している席)
・第2席:助手席の後ろ(後部左側)(乗降が最もスムーズな席)
・第3席:後部座席の中央(左右に挟まれる最も狭い席)
・最下座(第4席):助手席(道案内の指示、有料道路料金や運賃の支払い、ドアの目視確認を担当する席)
上司や取引先の顧客を案内する場合、まず左側の自動ドアから先に乗車してもらい、奥の「運転席の後ろ」へ詰めて座ってもらうのが基本作法だ。ただし、同行者が足腰の不自由な高齢者の場合や、着物を着用している場合は、奥へスライドして詰める動作が大きな身体的負担となる。その場合はマナーの形式にとらわれず、「乗り降りしやすい左側の後部座席(第2席)」を柔軟に勧める配慮が求められる。