店頭の看板や焼き台の周囲に掲げられた「三福」の文字。この串に刺さった3つの団子は、単なるボリューム稼ぎの造形ではありません。古くから修験道の霊場として栄えてきた高尾山において、この団子は明確な祈願の意味を背負っています。
団子を上から順に見ると、それぞれに固有の福徳が割り当てられています。
- 一番上の団子:大福(だいふく)……大きな福を授かり、運気を好転させる
- 二番目の団子:幸福(こうふく)……日々の生活が平穏で満ち足りた幸せに恵まれる
- 一番下の団子:裕福(ゆうふく)……経済的な豊かさ、暮らしの安定を得る
門前町の茶屋関係者が語る歴史的経緯によると、元来の団子は修験者(山伏)が険しい峰々を駆ける際の携帯食糧(兵糧丸や干し米)にルーツを持つとされています。それが江戸時代以降、八王子宿から甲州街道を行き交う旅人や薬王院への参詣講の増加に伴い、「三福を串(苦と死)に通して焼き尽くし、災いを払って福をいただく」という縁起担ぎの食文化へと昇華していきました。
「串を食べる」が「苦・死を断つ」に通じるという言葉遊びの妙も、江戸庶民の信仰と結びついて定着した理由のひとつです。単にお腹を満たすだけでなく、これから本堂へ向かう参拝者が心身を清め、運気を取り込むための「食べる御守」として機能してきた文脈が存在します。