グッドウィル・グループが辿った崩壊劇は、日本経済史における最大の企業失速劇の一つとして記録されています。同社が急速に解体へ向かった最大の理由は、短期間での過剰な業容拡大に社内ガバナンスが追いつかず、法令遵守を無視した収益至上主義が現場に蔓延したことに尽きます。
1995年に折口雅博氏が創業したグッドウィルは、登録型の日雇い軽作業派遣という未開拓市場を切り拓き、驚異的なペースで拠点を拡大しました。さらに2000年の介護保険制度スタートを商機と捉え、在宅介護サービス「コムスン」を傘下に収めて全国展開を断行。2004年には東証一部上場を果たし、人材派遣と福祉介護の二大柱で売上高数千億円規模のコングロマリットを形成しました。
転落の引き金となったのは、2007年6月に発覚したコムスンによる介護保険金の不正請求と虚偽指定申請でした。厚生労働省から全国規模の行政処分方針が打ち出され、主力の介護事業は事実上の事業継続不能に陥ります。さらに傷口を広げたのが、屋台骨であったグッドウィル本体における「データ装備費」の違法天引きと、港湾運送・建設現場への違法派遣(二重派遣)の発覚でした。
わずか1年の間に「介護」と「派遣」というグループの二大事業が相次いで行政処分と世論の猛烈な批判を浴び、取引先企業の契約解除が殺到。2008年7月、グッドウィルは東京労働局へ派遣事業の廃止届を提出し、看板を下ろすこととなりました。グループ全体も投資ファンドへの事業売却や清算を余儀なくされ、巨星は完全に墜落したのです。