ネット上のコミュニティやSNSでたびたび議論を巻き起こすのが、「炊飯器で卵を調理すると爆発する」という警告です。この噂の背景には、構造上の物理的リスクと電子レンジ調理との混同が存在します。
まず大前提として、電子レンジ加熱で起きる「マイクロ波による内部水分の突沸・爆発」と、炊飯器の加熱プロセスは原理が異なります。しかし、炊飯器調理における爆発防止の観点から見ると、決して根拠のない迷信とも言い切れません。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)や大手家電メーカーの取扱説明書でも、粘度が高い食材や蒸気経路を塞ぐ恐れのある調理に対して厳重な注意喚起がなされています。
特に近年主流となっている圧力IH炊飯器の場合、内釜内部に高い圧力がかかります。もし卵が急激な熱膨張によって破裂し、卵白や殻の破片が蒸気ノズルや調圧弁に詰まると、内部蒸気が抜けずに減圧できなくなり、蓋が突然開いて内容物が飛散する重大な火傷事故へと直結します。したがって、炊飯器ゆで卵を安全に行うためには、「通常炊飯モードまたはマイコン・IH炊飯器を使用する」「卵の丸ごと調理が取扱説明書で禁止されていないか確認する」という前提知識が欠かせません。
さらに見過ごせないのが衛生面の懸念です。生卵の殻には、微量ながらサルモネラ属菌(Salmonella enteritidis)が付着している可能性があります。厚生労働省の食品安全基準では、サルモネラ菌は70℃で1分間以上、または65℃で3分間以上の加熱によって完全に死滅すると定義されています。炊飯器の内部温度は炊飯工程中に100℃前後に達するため、規定の加熱時間を経れば菌自体は死滅しますが、調理前の手洗いや器具の二次汚染を防ぐ配慮は依然として不可欠です。