大門未知子という破天荒な天才外科医は、完全なフィクションのように見えて、実は緻密な現実の医療現場の取材から生み出されたキャラクターです。番組関係者や医療ジャーナリストの証言によると、大門未知子の人物像や手術シーンのモデルの一人となったのは、アメリカ・コロンビア大学で日本人として初めて多臓器移植の権威となった加藤友朗教授をはじめとする、世界最高峰の現場で道を切り拓いてきた名医たちでした。
さらに、大門未知子のトレードマークである「私、失敗しないので」という決めゼリフは、ロンドンオリンピックで女子柔道金メダルを獲得した松本薫選手が試合前に語った「ミスはしない。ミスはしないと思っている」という言葉から着想を得たことが、脚本を手掛けた中園ミホ氏らによって明かされています。超一流のアスリートが持つ極限の集中力と、世界水準の外科医が持つ卓越した技術が見事に融合して生まれたのが、大門未知子という唯一無二のヒロインでした。
制作現場における医師監修の厳格さも語り草となっています。オペ室のシーンでは、現役の心臓血管外科医や消化器外科医が常時立ち会い、メスの角度、持針器の持ち方、糸結びのスピードに至るまで本物の医師と同等のレベルが米倉涼子さんに要求されました。米倉さんは自宅でもタオルの端を縫い合わせる練習を何時間も繰り返し、撮影の合間にも手術の手順映像を食い入るように見つめていたと現場スタッフは証言しています。その飽くなきリアリティの追求が、現役の医師たちからも「手さばきが本物の外科医そのものだ」と絶賛される高い完成度につながりました。
また、本作を語る上で欠かせないのが、知事や東帝大学病院院長・蛭間重勝を演じた名優・西田敏行さんとの共演です。西田さんが繰り出す予測不能なアドリブの嵐を、米倉さんは大門未知子のクールさを崩さずに見事に受け止め、時にアドリブで返し、現場では常にスタッフの笑い声と心地よい緊張感が共存していました。西田さんが見せる「権力欲の権化でありながらどこか憎めない人間臭さ」と、米倉さんの「一切ブレないプロフェッショナリズム」の対比こそが、シリーズを10年以上にわたる大ヒットへと押し上げた最強のエンジンでした。