華やかなレジャー施設としての顔の裏に、この公園には都市計画上の重大な使命が隠されています。大島小松川公園が位置する地域は、海抜ゼロメートル地帯が広がる江東デルタ地帯です。過去の東京湾高潮や大規模河川氾濫の歴史を踏まえ、東京都は昭和40年代から「白髭東地区」と並ぶ大規模防災拠点として「亀戸・大島・小松川地区市街地再開発事業」を推進してきました。
東京都の都市計画資料によると、大島小松川公園はスーパー堤防(高規格堤防)と一体的に盛り土造成されており、約20万人の被災者を収容する広域避難場所に指定されています。公園全体が周囲の低地よりも高く設計されている理由は、荒川や東京湾の氾濫時にも水没を防ぎ、孤立した住民の命を繋ぐ高台を確保するためです。
園内を丹念に観察すると、防災機能の痕跡が随所に見つかります。 広大な芝生広場は延焼火災を食い止める「遮断緑地」として機能し、地下には大規模な耐震性貯水槽が埋設されています。さらに、停電時にも稼働するソーラー照明灯、仮設トイレを迅速に設置できるマンホールトイレ用ピット、救援物資の空輸を想定したヘリポート適地など、平時の遊具や広場はすべて有事の救助活動を計算した配置になっています。
旧中川に架けられた「さくら大橋」「もみじ大橋」も単なる景観用の歩道橋ではありません。地震火災が発生した際、江東区側と江戸川区側の住民が旧中川を越えて安全な広場へ相互に避難できるよう、十分な幅員と耐震性能を備えた避難専用ルートとして架橋されたインフラです。私たちが何気なくピクニックを楽しんでいる芝生は、首都直下地震や水害から都市を守る強固な盾そのものなのです。