日本国内の設置場所として最も頻繁に名前が挙げられるのが、滋賀県甲賀市にある京都大学生存圏研究所の信楽MU観測所(信楽MUレーダー)です。475本のクロス八木アンテナが円形に並ぶ独特の景観から、ネット上では「日本のHAARP施設」として格好の標的にされてきました。
両者の性能と運用目的を比較すると、全く異なるシステムであることが分かります。
アラスカのHAARP施設は、電離圏に向けて大出力の高周波(HF帯:2.7〜10MHz)を上空へ照射し、電子温度を局所的に上昇させてプラズマの反応を調べる「能動的な加熱装置」です。これに対して信楽MUレーダーは、超高層大気(対流圏から超高度大気)へVHF帯(46.5MHz)のパルス電波を発射し、大気ゆらぎからの微弱な散乱波を受信して風速や大気運動を立体的に可視化する純粋な受動型観測レーダーです。
さらに、送信電力の規模も桁違いです。HAARPの最大実効放射電力(ERP)が数ギガワット規模に達するのに対し、信楽MUレーダーの尖頭送信電力は1メガワット(平均電力はわずか50キロワット)程度にとどまります。大気や地殻に物理的な変異を与えるようなエネルギー照射能力は原理的に備わっていません。