SNSや知恵袋などのQ&Aサイトで、毎年新生活シーズンになると必ず投稿される定番のトラブルがあります。
「1TBのSSD(または外付けハードディスク)を購入してパソコンに接続したのに、プロパティを見ると931GBしか認識されない。初期不良ではないか、あるいは容量偽装詐欺ではないか」という切実な声です。
この消費者の不満の引き金を引いている黒幕こそが、「1024バイトが1キロバイトの理由」と、国際規格とのズレにあります。
ハードディスクやSSDを製造・販売するメーカー側は、国際単位系(SI単位系)のルールに厳密に従い、10進数で製品を設計しています。つまり、「1キロバイト(KB)=1000バイト」「1ギガバイト(GB)=10億バイト」「1テラバイト(TB)=1兆バイト」として計算して出荷します。
ところが、Windowsをはじめとする多くのOSは、内部処理を2進数基準で行っています。OS側は「1キロバイト=1024バイト」「1ギガバイト=1024×1024×1024=1,073,741,824バイト」として容量を再計算して画面に表示します。
この結果、メーカー公称値の「1兆バイト(1,000,000,000,000バイト)」をWindowsが読み込むと、以下の現象が起きます。
1,000,000,000,000 ÷ 1,024 ÷ 1,024 ÷ 1,024 ≒ 931.32 GB
故障でも詐欺でもなく、1000(10³)と1024(2¹⁰)の間に生じる約2.4%の誤差が、ギガ、テラと桁を重ねるごとに掛け合わされ、最終的に約7%もの表示上の目減りを生み出してしまうのです。
キビバイトとキロバイトの違い|IEC規格の導入と現場の摩擦
こうした混乱に終止符を打つべく、国際電気標準会議(IEC)は規格を制定しました。10進数の接頭辞(1000倍)を「キロバイト(KB)」、2進数の接頭辞(1024倍)を「キビバイト(KiB)」と明確に呼び分けるルールです。同様に1024倍ごとに「メビバイト(MiB)」「ギビバイト(GiB)」「テビバイト(TiB)」と表記することが国際標準として推奨されています。
UbuntuなどのLinux系OSや、macOS(Mac OS X Snow Leopard以降)は、この規格に準拠して表示を改め、ストレージ表記と実際の認識容量の乖離をなくす方針を採りました。しかし、PC市場で圧倒的シェアを握るWindowsが現在も「1024の累乗で計算しながら表記はKB/MB/GBのまま」を維持しているため、2026年の今なおユーザーの戸惑いは解消されていません。