今回の台風が日本近海に近づいても勢力を落とさず、むしろ発達を続けた最大の要因は、日本南岸の海面水温が27℃以上という異例の高さを維持していた点にあります。通常、台風は北上するにつれて冷たい海水によってエネルギー供給を絶たれ衰退しますが、海水温が平年より1〜2℃高かったことで、大量の水蒸気が絶え間なく台風中心部へと供給され続けました。
大気上層の偏西風の蛇行と太平洋高気圧の縁を回る湿った空気(暖湿流)の流入が重なったことも、急速な気圧低下を招いた直接的な原因です。気象研究所の解析でも、水蒸気フラックス(水蒸気の流れの強さ)が過去の激甚災害台風に匹敵する数値を示していることが確認されています。
さらに警戒すべきは、台風本体の雨雲が到達する前から発生する線状降水帯の存在です。南からの暖湿流が山地にぶつかることで局地的な積乱雲群が次々と発生・停滞し、同じ地域に数時間にわたって線状の強雨をもたらします。これにより、総降水量が平年の1ヶ月分をわずか半日で超えるおそれがあり、土砂災害や中小河川の氾濫危険度が急上昇します。