二人の間には、1990年9月に誕生した長女・趣里がいます。今や日本アカデミー賞をはじめ数々の演劇賞を受賞し、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインとして国民的女優へと成長した趣里ですが、その育成環境には夫妻の明確な哲学がありました。
かつて趣里が芸能界入りを志した際、水谷も伊藤も「親の力は一切使わない」という厳しい条件を課したと言われています。本名ではなく芸名(趣里)のみでオーディションを受け続け、下積み時代を泥臭く駆け抜けた娘に対し、二人は過度な口出しを行いませんでした。
家庭内において、親が敷いたレールを歩ませる「ステージママ・パパ文化」とは正反対に、心理的バウンダリー(健全な心の境界線)を維持し続けたことが、娘の独立心を育むと同時に、子育て終了後も夫婦関係が空洞化しない強靭な土台となっています。