本作のキャラクターデザインにおける真の恐ろしさは、可愛らしい動物のビジュアルの裏に仕込まれた政治的・社会的なアナロジーにある。
人口の90%を占める「草食動物」と、わずか10%の「肉食動物」。この数的な非対称性と力関係の構図は、現実世界における多数派と少数派(マジョリティとマイノリティ)の摩擦、さらにはマスメディアによる恐怖政治の構図をストレートに描き出している。温厚そうに見える羊のベルウェザー副市長が仕掛けた陰謀は、「弱者」の皮をかぶった者が他者を排斥しようとする現代のアイデンティティ・ポリティクスの闇を過酷なまでに暴き立てた。
外見や種族というあらかじめ決められた属性によって他者を判断することの危険性。それを説教くさく語るのではなく、キャラクターたちのサスペンスフルな駆け引きを通して観客に自問させる語り口は、メディア表現として極めて高度だ。