劇団四季に入所した柿澤勇人は、卓越した身体能力と天性の歌声で瞬く間に頭角を現します。入所間もない時期に『ジーザス・クライスト=スーパースター』のペテロ役に抜擢され、さらにはブロードウェイの話題作『春のめざめ』日本初演において、劇団四季の創設者・浅利慶太氏から主人公・メルヒオール役に指名されるという、異例のスピード出世を遂げました。
まさに将来の劇団四季を背負って立つプリンスとして嘱望されていた彼ですが、入団からわずか2年余りの2009年末に電撃退団を発表します。ファンや演劇界に大きな激震が走ったこの決断の裏には、表現者としての強い渇望がありました。
劇団四季独自のメソッドや完成された様式美の中で演じることへの感謝を抱きつつも、彼の中には「もっと泥臭く生身の感情をぶつけ合いたい」「敷かれたレールを飛び出し、ストレートプレイや映像の世界にも挑戦したい」という抑えきれない衝動が芽生えていました。安定した劇団のトップスターの座を自ら手放し、外の荒波へ飛び込む道を選んだ覚悟が、その後の俳優・柿澤勇人の骨太な実力へと繋がっていきます。