和田アキ子というシンガーの真髄を語る上で欠かせないのが、その生い立ちと音楽的ルーツです。大阪のジャズ喫茶で歌っていた10代の頃、彼女が傾倒していたのはレイ・チャールズやアレサ・フランクリンをはじめとする本場のソウルミュージックでした。当時の歌謡界は清純派のアイドルや情緒的な演歌が主流でしたが、彼女が放つハスキーで太いアルトボイスと日本人離れしたグルーヴ感は、ホリプロ創業者・堀威夫氏の目に留まり、「和製R&Bの女王」という鮮烈なキャッチコピーとともに1968年『星空の孤独』で世に送り出されました。
自著や当時の回想録で本人が明かしている通り、デビュー初期は自身の長身と低音ボイスにコンプレックスを抱いていた時期もありました。しかし、1969年の『どしゃぶりの雨の中で』が大ヒットを記録したことで、その規格外のスケール感は日本のポップスシーンにおける強力な武器へと転換されます。ゴスペルのエッセンスを取り入れた力強いシャウト、哀愁を帯びたブルースフィーリング、そして言葉の1音1音を粒立てて届ける明瞭なアタックは、半世紀以上を経た今も色褪せない輝きを放っています。